本文へ移動
いちばのみらい
仲卸業務改善

水産仲卸の業務効率化は『探す時間』から|確認待ち・聞き直しを減らす方法

水産仲卸の業務効率化を、資料や担当者を探す時間の測定から始める方法を解説します。確認待ちと聞き直しを記録し、自社の実測値で改善順を決める手順です。

約9分 いちばのみらい編集部

水産仲卸の業務効率化で最初に見直したいのは、入力速度よりも「探す時間」です。伝票を探す、担当者を探す、電話で聞き直す、返事を待つ。この時間は一件ずつでは短く見えても、仕入れ、販売、配達、締めの各工程を止めます。

答えは、推測で「無駄が多い」と決めず、誰が・何を・どこで探したかを自社で記録することです。その記録をもとに、置き場所、状態表示、引き継ぎの順で整えると、紙や電話をすべてなくさなくても改善を始められます。

この記事では、効果の数値を外から当てはめません。改善前後を同じ条件で測り、自社の実測値で判断する手順を紹介します。

確認待ちと聞き直しを減らす改善の流れ

なぜ「探す時間」が水産仲卸の仕事を止めるのか

水産仲卸の事務所には、注文票、仕入速報、売上伝票、加工の指示、配送メモ、値決めの情報などが集まります。情報が紙、電話、口頭、個人のメモに分かれていると、記録が存在していても、必要な人が必要な時に見つけられません。

問題は、探している本人の時間だけではありません。「この単価でよいですか」と営業担当へ聞く間、入力が止まります。事務担当が返事を待つ間に別の処理へ移れば、戻った時に確認内容を思い出す作業も生まれます。

仲卸の一日が長くなる業務構造で整理しているように、前工程で残らなかった情報は、最後の帳面合わせや翌日準備で探し直すことになります。探す時間は、一日のどこかに独立してあるのではなく、工程の間に入り込んでいるのです。

「人を探す」も測定対象にする

ファイルや紙だけを対象にすると、実態を見落とします。担当者へ聞く、電話をかけ直す、配達から戻るのを待つといった行動も、必要な情報を探している時間です。

特に、「あの人に聞けば分かる」が日常になっている場合、質問を受ける側の作業も中断されます。人が会社の検索機能になる属人化を避けるには、質問した側と答えた側の両方で何が止まったかを見る必要があります。

まずは自社の「探す」を同じ書式で記録する

改善前に、現状を測ります。専用システムは必要ありません。共有できる表を一つ用意し、探す行動が起きた時に短く記録します。

記録項目は、次の程度に絞ります。

項目記録する内容
発生日時探し始めた時刻
業務仕入、受注、売上入力、配送、締めなど
探したもの伝票、単価、数量、配送先、加工状態など
探した先紙、共有フォルダ、担当者、電話、チャットなど
終了日時情報が見つかり、作業を再開した時刻
結果見つかった、聞き直した、未解決、後回し
原因メモ置き場所不明、記入なし、状態不明、担当者不在など

長い説明を書かせると記録そのものが負担になります。原因は最初から細かく分類せず、短い言葉で残し、後から似たものをまとめます。

測る範囲と期間を先に決める

全社一斉に始める必要はありません。まず「午前の売上入力」「配達後の締め」など、一つの工程を選びます。担当者と対象業務を固定し、通常日だけでなく、入荷や注文の動きが異なる日も含めて複数日記録します。

開始前に、何を「探す」と数えるかもそろえます。例えば、手元の伝票を見るだけなら含めず、置き場所を移動して探した時、別の人へ確認した時、返答待ちで作業を止めた時を記録する、と決めます。

こうしておけば、記録する人による差を小さくできます。目的は他社と比べることではなく、同じ自社業務の改善前後を比べることです。

件数と時間を分けて集計する

集計では、合計時間だけを見ないようにします。短い聞き直しが何度も起きる業務と、まれに長い確認待ちが起きる業務では、対策が違うからです。

  • 発生件数が多いもの
  • 一回あたりの待ちが長いもの
  • 複数人の仕事を止めるもの
  • 請求や配送など、後工程への影響が大きいもの

この四つの観点で並べると、最初に直す場所を選びやすくなります。平均値だけでなく、長く止まった事例も個別に確認します。

記録から原因を四つに分ける

探す時間が見えたら、原因を「置き場所」「状態」「呼び方」「判断」に分けます。一つの対策で全部を解決しようとせず、原因に合う手当てを選びます。

置き場所が分からない

紙の保管場所や共有フォルダが人によって違う状態です。日付、取引先、伝票種別のどれで探すかが決まっていないと、同じ資料でも探し方が変わります。

この場合は、保管先を一つにし、名前の付け方を決めます。紙を残すなら、未処理、確認中、処理済みの箱を分けるだけでも、探す範囲を限定できます。

処理状態が分からない

伝票は見つかっても、入力済みか、単価確認中か、差し替え後か分からない状態です。最新版を確かめるために、結局担当者へ聞くことになります。

対策は、状態を短い言葉で表示することです。「未入力」「確認待ち」「確定」「差し戻し」のように、現場で使う状態をそろえます。細かすぎる分類より、次に誰が動くか分かることを優先します。

呼び方がそろっていない

同じ魚でも、仕入先の名称、社内の通称、販売時の商品名が違うことがあります。名称だけで検索すると、記録があるのに見つからないことが起きます。

すべての呼び方を一つに消すのではなく、正式名と現場名を対応させます。市場の商品マスター設計の考え方のように、魚種、産地、サイズ、状態、単位を分けておくと、後からたどりやすくなります。

判断理由が残っていない

単価変更、値引き、代替品、配送変更などは、結果だけでは確認できません。「なぜそうしたか」が残っていないため、担当者を探すことになります。

判断を長文で書く必要はありません。「品質差」「欠品代替」「得意先了承済み」など、後から確認できる短い理由と、判断した人を残します。定型化できない判断ほど、結果と理由をセットにします。

改善は「一か所・一状態」から始める

記録を集めた後、発生件数や後工程への影響が大きい対象を一つ選びます。例えば、売上伝票の確認待ちが目立つなら、まずその伝票だけを対象にします。

  1. 原本または正しい情報を見る場所を一つ決める
  2. 未処理、確認待ち、確定の状態を付ける
  3. 確認待ちには、質問内容と答える人を残す
  4. 口頭で回答した場合も、回答結果を同じ場所へ戻す
  5. 例外が起きたら、理由を短く追記する

紙を使い続ける場合でも、この順番は使えます。大切なのはデジタル化の有無より、「どこを見れば現在の状態が分かるか」をそろえることです。

改善後も同じ条件で測り、効果を確かめる

対策後は、改善前と同じ対象、同じ記録項目で再測定します。繁忙度や担当人数が大きく違う期間を比べると、対策の効果なのか業務量の差なのか判断しにくくなります。注文件数など、当日の条件も一緒に残しておきます。

比較するのは、探した合計時間だけではありません。発生件数、確認待ちの件数、同じ内容の聞き直し、未解決のまま次工程へ送った件数も見ます。

結果が変わらなければ、対策が失敗だと急いで決めず、記録を見直します。置き場所は決まったが状態が更新されていない、呼び方が違って検索できない、といった次の原因が見えることがあります。

この方法なら、「何割減ったはず」といった外部の数字に頼らず、自社の実測値で継続か修正かを判断できます。

探す時間を減らすことは、判断する時間を戻すこと

水産仲卸の業務効率化は、現場の動きを一気に変えることから始めなくてもかまいません。まず、伝票、状態、担当者、判断理由を探している場面を記録し、止まり方を見えるようにします。

改善の基準は、紙が何枚減ったかではありません。必要な情報へたどり着けるか、確認待ちの次の担当が分かるか、後工程で同じことを聞き直さずに済むかです。

自社で使える測定表や業務整理のひな型が必要な場合は、資料ダウンロードから確認できます。まず一つの工程を測り、現場に合う改善順を決めるためにお使いください。

おすすめの記事

この記事について、現場の声をお寄せください

いちばのみらいは、市場に関わる方々の経験や問いから育てていくメディアです。記事への感想、取り上げてほしいテーマ、現場で感じていることがあればお知らせください。